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人工授精(AIH)

1.人工授精(AIH)とは

人工授精(AIH)は、不妊治療のステップにおいて「一般不妊治療」の最終段階に位置づけられる治療法です。
英語では「Artificial Insemination with Husband’s semen」と呼ばれ、その頭文字をとって「AIH」と略されます。

人工授精(AIH)の基本的な仕組みと定義

人工授精の基本的な仕組みは、採取された精液から「運動性の高い良好な精子」を抽出し、女性の排卵のタイミングに合わせて細いカテーテルを用いて子宮の奥(子宮腔内)へ直接注入するものです。

通常、自然な性交渉においては、射精された精子は子宮の入り口(子宮頸管)を自力で通り抜け、子宮内を泳いで卵管へとたどり着く必要があります。
しかし、このプロセスの途中で精子の数が減少したり、動きが止まってしまったりすることがあります。
人工授精は、この「関門」を医療の力でショートカットし、精子を卵子の待つ卵管の入り口近くまで届けることで、受精の確率を底上げします。

特筆すべきは、「人工」という言葉が使われてはいますが、精子を注入した後の受精、分割、着床といったプロセスはすべて、自然な妊娠と全く同じ経過を辿るという点です。

メリット・デメリット

人工授精を検討する上で、その特徴を多角的に理解しておくことは非常に重要です。

メリット

  • 身体的負担の少なさ: 麻酔の必要はなく、処置自体は数分で終了します。痛みも内診と同程度であることがほとんどです。
  • 精子の状態をカバーできる: 濃縮・洗浄のプロセスにより、自然な性交渉よりも多くの「戦力となる精子」を送り込めます。
  • 日常生活との両立: 通院回数が限られているため、お仕事をお持ちの方でも比較的スケジュール調整が容易です。

デメリット

  • 卵管の機能に依存する: 卵管の中で出会い、自力で受精する必要があるため、卵管が詰まっている場合には効果が期待できません。
  • 成功率の限界: 1回あたりの妊娠率は10%前後であり、劇的な向上を約束するものではありません。
  • 多胎妊娠のリスク: 排卵誘発剤を併用する場合、複数の卵子が排卵され、双子以上の妊娠となる可能性がわずかに高まります。

人工授精が向いている人・向いていない人

この治療法には、明確な「適応」があります。

向いている人

  • 軽度の男性不妊: 精子の数や運動率が基準を少し下回っている場合。
  • 性交障害: ED(勃起障害)や膣内射精障害、重度の性交痛などで性交渉が困難な場合。
  • フーナーテスト不良: おりもの(頸管粘液)と精子の相性が悪く、精子が子宮内に侵入できない場合。
  • 原因不明: タイミング療法を半年以上続けても結果が出ない場合。

※フーナーテスト:精子とおりもの(頸管粘液)の相性や、精子が子宮内へ移動できる能力などを調べること

向いていない人

  • 重度の男性不妊: 精子の数が極端に少なく、顕微授精が必要なレベルの場合。
  • 両側卵管閉塞: 卵子の通り道が完全に塞がっている場合。
  • 高度な排卵障害: 薬物療法でも卵子が育たない場合。
  • 年齢的な緊急性が高い: 卵子の質の低下を考慮し、より高確率な体外受精を優先すべき場合。

 

2.人工授精のスケジュール

人工授精を成功させる最大の鍵は「排卵日との緻密な同期」にあります。

治療開始から人工授精当日までの流れ

  1. 卵胞チェック(月経周期10〜12日目頃): 超音波検査(エコー)を行い、卵巣の中で卵子を育んでいる「卵胞」がどの程度大きくなっているかをミリ単位で測定します。
  2. ホルモン検査: 必要に応じて尿検査や血液検査を行い、排卵を促すスイッチであるLH(黄体形成ホルモン)の値をチェックします。
  3. 実施日の確定: 卵胞が18〜20mm程度の適切な大きさに達した段階で、翌日または翌々日の実施日を決定します。
  4. 排卵のトリガー: 排卵時間を正確にコントロールするため、hCG注射や点鼻薬(スプレキュア等)を使用して排卵を促すことがあります。

人工授精当日の流れと所要時間

  1. 採精: 当日の朝、ご自宅またはクリニックの採精室にて精液を採取します。
    精子は急激な温度変化に弱いため、人肌程度の温度で持ち運ぶことが推奨されます。
  2. 精子の調整(約60〜90分): 提出された精液を遠心分離器にかけ、雑菌や不純物、死滅した精子を取り除きます。
    「スイムアップ法」や「密度勾配遠心法」を用い、運動性の高い精子だけを高濃度に濃縮します。
    この調整時間が、当日のスケジュールの中で最も時間を要する部分です。
  3. 注入手技(約5〜10分): 内診台にてカテーテルを挿入し、調整済みの精子を静かに子宮内へ届けます。
  4. 終了後: 処置後の安静時間はクリニックによって異なりますが、5〜10分程度お休みいただき、その後の活動に制限はありません。

妊娠判定までの経過と注意点

人工授精の当日は、入浴や仕事、軽い運動に制限はありません。
数日後に「排卵済み確認」の受診が必要になる場合もあります。
また、着床をサポートするために、黄体ホルモン剤(デュファストン等の飲み薬や坐薬)が処方されるのが一般的です。

約2週間後、月経が来ない場合に市販の検査薬やクリニックでの血液検査で妊娠判定を行います。

 

3.人工授精の妊娠確率と人工授精をおこなう回数の目安・費用について

現実的な期待値と将来の計画を立てるための重要なセクションです。

人工授精の妊娠率の目安と年齢の影響

人工授精の1回あたりの妊娠率は、一般的に5%〜10%程度です。
これは「健康なカップルが自然に妊娠する確率」とほぼ同等です。

特筆すべきは年齢の影響で、女性の年齢が30代後半、40代と上がると、卵子の質の変化により、1回あたりの成功率は緩やかに低下します。
そのため、年齢によっては早めのステップアップを意識することが非常に重要になります。

何回まで続けるのが一般的か

多くの研究データ(※1)によると、人工授精で妊娠に至る方の約90%が「5〜6回目まで」に結果を出しています。

それ以降は、回数を重ねても周期あたりの妊娠率は上昇しにくく、横ばいになることが分かっています。
そのため、医学的には5〜6回を一区切りとし、それ以上の継続は時間的・精神的なコストを考慮して、次のステップへの移行を提案するのが一般的です。

人工授精の費用相場と保険適用

2022年4月から人工授精は保険適用の対象となりました。

自己負担(3割)の場合、1回あたりの窓口負担額は数千円〜1.5万円程度です。
これには手技料だけでなく、事前の超音波検査、ホルモン検査、当日のお薬代などが含まれます。
以前の自費診療(2〜5万円)に比べると、心理的にも経済的にも継続しやすい体系となっています。

 

4.ステップアップ

不妊治療において「ステップアップ」は、決してこれまでの治療の「失敗」ではなく、より効率的な解決策への「シフト」を意味します。

体外受精へ進む判断基準

次のステージである体外受精(IVF)へ進む判断基準は、主に以下の3点です。

  1. 回数の区切り: 人工授精を5〜6回繰り返しても妊娠に至らない。
  2. 年齢的な要因: 35歳、あるいは38歳以上で、卵子の在庫(卵巣予備能)や時間の猶予を考慮し、より高確率な方法を優先したい。
  3. 医学的な発見: 治療の過程で卵管の癒着が疑われたり、精子の状態が著しく低下したりするなど、人工授精の限界が見えてきた。

ステップアップのメリット・デメリット

体外受精へのステップアップには、受精の成否を直接確認できるという大きなメリットがあります。
これにより、体内では分からなかった不妊原因の特定につながるほか、1回あたりの妊娠率も人工授精の数倍にあたる30〜50%程度まで向上します。

一方で、採卵に向けた頻繁な通院や自己注射、麻酔を伴う処置など、身体的・時間的な負担は増大します。
また、保険適用内であっても人工授精より費用が高額になるため、心身と経済面の両方で事前の準備と検討が必要になります。

 

人工授精は、お二人の「授かりたい」という願いを医学の力で支える大切な一歩です。

一人で抱え込まず、まずは現在の状況を正しく知ることから始めてみませんか。
私たちが、あなたらしい未来への歩みを全力でサポートいたします。

 

参考文献リスト

 

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